■非常勤医師のご紹介

脳神経外科・セカンドオピニオン対応

高木 清 医師KIYOSHI TAKAGI

高木 清 医師

医療法人社団 葵会
千葉・柏たなか病院 正常圧水頭症センター センター長
東京大学生産技術研究所 研究員
専門:
特発性正常圧水頭症(認知症、歩行障害、排尿障害)
低髄液圧症候群
担当:土曜日 10:00~17:00(第2週)

特発性正常圧水頭症と、脳脊髄液減少症と呼ばれている疾患の診断と治療をしています。
「特発性正常圧水頭症」は、物忘れ(認知症、痴呆症)、 おもらしをする(尿失禁)、 ころびやすい(歩行障害) などの症状が主で、「年のせい」とされて見逃されていることの多い病気です。正しく診断されれば、手術によって劇的な症状改善が期待できます。
「脳脊髄液減少症」と呼ばれている疾患は、軽度外傷性脳損傷や、慢性外傷後頭痛(頭などを打った後に、いつまでも続く頭痛)の中で、長く起きていたり、天気が悪くなると悪くなるタイプの頭痛と思われます。追突事故などの軽い頭頚部外傷の後、頭痛、頚部痛、記銘力低下、めまい、全身の痛みなど様々な症状が長期間続き、会社や学校を休まなければならないほどひどいのに、MRIのような精密な件瀬でもほとんど異常が見つかることのない病気です。
幸いなことに、最近ではブラッドパッチ(硬膜外自己血注入療法)や硬膜外酸素・生理食塩水注入療法など様々な治療により、95%の患者で症状の改善がみられ、約60%の患者が社会復帰しています。

【経歴】

1978年3月28日 東京大学医学部医学科卒業
1978年5月21日 東京警察病院
1978年12月1日 東京大学医学部附属病院(研修医)
1981年6月21日 総合会津中央病院
1984年3月1日 関東労災病院
1985年9月16日 日本赤十字社医療センター
1986年3月1日 脳神経外科東横浜病院
1987年4月1日 帝京大学医学部助手
1988年4月1日 帝京大学医学部講師
1991年9月1日 マイアミ大学医学部 研究助手
1993年7月1日 帝京大学医学部講師
2002年12月1日 帝京大学医学部助教授
2003年4月1日 東京大学生産技術研究所 研究員
2005年4月1日 小倉病院 院長
2005年6月1日 藤田保健衛生大学医学部 客員助教授
2005年10月1日 介護老人健康施設 葵の園・川崎 施設長
2006年4月1日 藤田保健衛生大学医学部 客員教授(2011年3月31日まで)
2007年4月1日 おおたかの森病院 脳神経外科
2010年4月1日 千葉・柏たなか病院 正常圧水頭症センター

【資格・所属学会】

日本脳神経外科学会
日本正常圧水頭症学会
日本脳卒中学会
アメリカ脳神経外科学会
国際水頭症学会

【資格】

脳神経外科専門医
脳卒中専門医

特発性正常圧水頭症(idiopathic normal pressure hydrocephalus: iNPH)について

「特発性正常圧水頭症」はよく「突発性正常圧水頭症」と間違って書かれますが、「突発性正常圧水頭症」という病気はありません。
特発性正常圧水頭症は多くの場合、非常にゆっくり進行します。英語では idiopathic normal pressure hydrocephalus と呼び、専門医の間では単語の頭文字を取って iNPH と呼んでいます。
正常圧水頭症は、脳神経外科医や神経内科医の間ではクモ膜下出血や髄膜炎などの後に歩行障害、失禁、認知症の 3つを起こす病態として良く知られています。これは原因がはっきりしている続発性正常圧水頭症です。
最近話題になっているのは特発性正常圧水頭症で、はっきりした原因が分からないのにこれらの症状を出します。 この病気は70歳以上の高齢者に見られることが多く、これまで手術した約400例の平均年齢は78歳です。症状は歩行障害または頻尿のみという場合もあります。
症状からは「パーキンソン病」、「過活動性膀胱」、あるいは「アルツハイマー型認知症」とされていることも珍しくないようです。最近では「ロコモティブ・シンドローム」と間違われることもあるようです。CTやMRIをとっても、「脳萎縮」あるいは「多発脳梗塞」と診断されることが珍しくありません。
診断方法には腰椎穿刺(背中から針を刺す)で脳脊髄液を捨てて症状が改善するかを 見るテスト(タップテスト、tap test)が一番簡単で確実です。
今のところCTやMRIで特発性正常圧水頭症を疑うことはできても、手術で良くなるかどうかを決めるのは難しく、中には現在の診断基準ではCTやMRIで疑うことも出来ない患者もいます。
治療は今のところ手術以外にはありません。手術は脳脊髄液を持続的に排除することを目的としていますが、このためにはいくつかの方法があります。
代表的なものとしては脳室腹腔短絡術(ventriculo-peritoneal shunt, VP shunt)、 腰椎クモ膜下腔腹腔短絡術(lumbo-peritoneal shunt, LP shunt)、脳室心房短絡術 (ventriculo-atrial shunt, VA shunt(「ブイエー シャント」と読みます))があります。
現在世界的に広く行われているのはVP shuntですが、最近の調査では日本で行われている特発性正常圧水頭症に対するシャント術のおよそ7割が LP shuntです。VA shuntは他の手術でうまくいかなかったとす。特に見落とされやすいのは、脳卒中(脳出血や脳梗塞)に合併した場合で、症状のほとんど全てが脳卒中のせいにされている可能性があります。
これらの疾患(特発性正常圧水頭症と脳卒中)が高齢者に多いということを考えると、団塊の世代が70代、80代に達する今後10年から20年の間に、患者数は非常に多くなることが予測されます。年を取って転びやすくなった、物忘れが多くぼんやりとしている、尿の回数が多くなったり失禁するようになったなどの症状がみられたら、年のせいではなく、特発性正常圧水頭症の可能性がるのでご相談下さい。

■脳脊髄液減少症(外傷性低髄液圧症候群とも呼ばれている)について

脳脊髄液減少症と呼ばれている疾患は、2002年以来、何度かテレビで話題になり、また新聞や雑誌で紹介されたので、病名だけは医師よりもむしろ一般の人に 広く知られるようになったようです。
日本では脳脊髄液減少症という病名が、交通事故(特に追突事故)後の「むち打ち症」との関連で使われることが非常に多いようです。
つまり、 追突事故のように軽い頭頸部外傷の後、いつまでも頭痛やめまいが続き、ものがかすんで見える、記憶力や集中力が落ちたなどの多彩な症状が現れる、以前は「むち打ち症」と呼ばれていた 疾患の原因は、脳脊髄液が漏れて減少してしまうことだというものです。
脳脊髄液が本当に減少したかどうかを証明することとは実際には困難ですので、私自身は「起きていると悪化するタイプの慢性外傷後頭痛」あるいは「軽度外傷性脳損傷」と呼ぶようにしています。したがって、私が診療している「外傷後慢性頭痛」あるいは「軽度外傷性脳損傷」が「脳脊髄液減少症」と同じ物という確証はありません。
しかし、いろいろな理由から、この病気の発症にはおそらく脳脊髄液の循環異常が関与しており、 ブラッドパッチ(硬膜外自己血注入療法)硬膜外酸素・生理食塩水注入療法という簡単な処置で症状は著しく改善することが多いようです。残念なことに頭痛を診察している脳神経外科専門医の間ではこの病気はまだあまり広く認められていません。 むしろこの疾患に否定的な医師も多いようです。
この病気は非常にたくさんの症状を引き起こしますが、現時点ではほとんどが自覚症状のみです。「起きていると悪化するタイプの慢性外傷後頭痛」(現在「脳脊髄液減少症」と呼ばれるものと多分同じ病気)では、頭痛だけで他の症状がないと言うことはありません。頭痛も、低髄液圧症候群の時に見られる起立性頭痛に似ていますが、これと違うのは、起立性頭痛の定義(起き上がると15分以内に起こる)はほとんどの患者で当てはまりません。
それでも、長く立っていたり座っているだけで悪化するので、起立性頭痛と呼ぶ以外に今のところ適当な表現はありません。天気が悪くなると症状がひどくなることも大きな特徴の一つです。
頭痛以外の症状としては、光がまぶしい(光過敏症)、目が痛い、視力が落ちた、目がかすむ、物を見たときに焦点が合わない、 めまいがする、耳鳴りがする、 周りの音が異常に大きく聞こえる(聴覚過敏症)、顔がしびれる、口が十分開かない(顎関節症)、味が分からない、 集中力が落ちた、 物忘れが激しい、 気分が落ち込む、人と話をしていて訳の分からない内容を話し出す、 肩が凝る、背中が痛い、腰が痛い、全身が痛い、手が痺れる、急に力が抜ける、マヒもないのにペットボトルのふたが開けられない、下痢をする、便秘をする、失禁する、おしっこの回数が増える、微熱が出る、汗の出方が異常になる(寝汗がひどくなることが多いようです)、 性欲がなくなる(男ではインポテンツ)など、非常に多彩です。
線維筋痛症や慢性疲労症候群、あるいは起立性調節障害と診断されていることもあります。
 これらを「慢性外傷後頭痛」(脳脊髄液減少症?)に伴う症状とする理由は、治療によって短期間に多くが消失または軽減するからです。「脳脊髄液減少症」を扱っている医師の間では、放射性物質を用いた脳槽シンチグラフィー(RIシステルノグラフィー)が診断確定に有用だと考えられています。
しかしこれには批判も多いようです。個人的な経験に過ぎませんが、RIシステルノグラフィーも「脳脊髄液減少症」の診断にはあまり役に立たないようです。RIシステルノグラフィーが当てになるのであれば、治療前に「髄液漏れ」と判断された所見が、治療(ブラッドパッチ)を行ったあとの検査で消失して「治癒」となるはずです。
しかし、実際には治療によって「髄液漏れ」の所見がなくなったと言われても症状が改善してないことも珍しくないようです。つまり、個人的な意見ですが、現時点では画像による確定診断は困難ではないかと考えています。この点は特発性正常圧水頭症と似ています。
CTやMRI 、RI脳槽シンチグラフィーなどの画像による診断が難しいので、現時点では病歴と症状に頼って診断を行っています。「治療(ブラッドパッチなど)の適応になる慢性外傷後頭痛(起きていると悪化するタイプの外傷後慢性頭痛)の診断基準」として次の項目を挙げています。原則として、これらの全てを満たしている場合に治療の対象となると考えています。

  1. 外傷以前には仕事、学業、家事などを妨げる頭痛やめまいはなかった。
  2. 外傷後比較的早期に(多くは直後から1習慣以内)に頭痛やめまいなどの症状が現れる。
  3. 頭痛などの症状が3ヶ月以上続く。
  4. 頭痛などの症状は体を起こしていると悪くなる(朝起きたときは良いが、昼頃になると頭痛などがひどくなる)
  5. 頭痛などの症状が天気に左右される(低気圧で悪くなることが多い)
  6. 頭痛などの症状は頑張り続けると悪くなる
  7. マヒ(手足が動かない、あるいは動きにくい)などのハッキリした神経学的な症状がほとんどない
  8. CTやMRI(MRミエログラフィーも含む)では異常がない(症状を説明できる病変が見つからない)
  9. 脳脊髄液圧は正常(高いこともある)
  10. 通常の治療(頭痛薬など)があまり効かない

治療は現時点では主に硬膜外酸素・生理食塩水注入療法を行っていますが、症状によってはブラッド・パッチも行っています。治療成績については始めに書いた通りです。
約 20% の患者は完治(事故以前の状態に完全に戻ること)しています。この病気は症状が多彩なだけでなく、原因も交通事故、テニス、 カイロプラクティクスなど様々です。激しく咳き込んだ、尻餅をついたと言った些細なことでも起こります。
しかし、CT、MRIなど通常の検査ではほとんどの場合正常と判断されています。 したがって診断は大変に難しいのが現状です。
鞭打ち症などの後、いつまでも多くの症状を訴える患者さんがおられたらこの疾患を疑ってみるべきだと考えます。

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